A:暴れ飛獣 シシウトゥル
バヌバヌ族は、サヌワという雲海原産の飛獣を、騎乗獣や荷駄として利用しているわ。凶暴なこの野生の飛獣を、手懐けているんだから、バヌバヌ族の獣牧士も大したものよね。
ところが、そんな獣牧士でも決して御すことができず、遂にはバヌバヌ族の村から逃げ出したヤツがいるの。近隣の脅威になっている「シシウトゥル」よ。
~クラン・セントリオの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
アバラシア雲海に住むバヌバヌ族は飛獣を飼育している。フワフワと微妙に移動する浮島はなかなか橋で繋ぐことができないのでどうしたって空を飛ぶ手段が必要となるのだ。
飼育されている飛獣はサヌワと呼ばれるアバラシア原産の獣で、野生のものも多く存在する。大きな翼で力強く飛び、荷駄としても充分に使える。見た目は中途半端な竜の体に不釣り合いな大きな翼を付けたような格好で、顔つきも凶悪なのだが、性質的に犬に近いものを持っているらしくなれるとジャレついてくる。無邪気に懐かれると凶悪な顔も可愛く見えてくるから人の情って不思議なものだと思う。
野生のサヌワは空を飛ぶ小鳥や地上を走る小さな動物を捕食して生きている。
普段は取り立てて凶暴という訳でもないのだが、怒らせると群れで襲ってくるので厄介な獣ではある。クラン・セントリオのメンバーが言う通りそんなサヌワを手懐けるのだからバヌバヌ族の獣牧能力は大したものだ。だが今回はそんなバヌバヌ族の獣牧士でも手懐けられないサヌワがターゲットになっていた
「空を流れるような雲のような大きな心でシシウトゥルを見守ってはくれまいか」
顔見知り、とは言っても顔の違いは全然分からないがバヌバヌ族の獣牧士があたし達に歩み寄ってきてそう言った。
「誰かが襲われたってクラン・セントリオから聞いたけど」
あたしは手配書に掛かれていた内容を思い返しながら言った。
基本的に危険性がないならリスキーモブには指定されることはない。もちろん今までにも担当官の思惑や思い込みで危険性がないのに指定されていたケースも見てきたし、保身のための誤魔化しや上官の機嫌取りのゴマすりで指定されていたケースも見てきたから一概にはいえないのだが。
「浮島の植物を恵みの光で育てる太陽のごときサヌワなのだ」
獣牧士は熱意を持って言ったが残念ながら相方は首を捻った。
「ね、どういう意味なん?」
「要するに神様みたいなサヌワだってこと」
小声で相方に教える。相方は眉間に皺を寄せて分かったような、わからないような顔をして頷いた。
「確かに、シシウトゥルにブンドから逃げるコリガンのように追い回された騎兵もいたが、シシウトゥルに手を出せば浮島から突き落とされるパイッサの如き罰がくだるぞ」
「ん…」
困った顔で相方があたしを見た。
「シシウトゥルに襲われた薔薇騎兵団の騎兵もいたけど、だからといってシシウトゥルを狩ろうとすれば見るも無残な罰が当たるぞってこと」
あたしは翻訳して相方に伝え、それに続けて思いついたことを獣牧士に伝えた。
「じゃ、厚い雲に覆い隠される太陽のようにシシウトゥルを隠すことはできない?」
相方があたしの顔を見ながら驚いた顔をした。
それに対して獣牧士は雲間から覗く太陽の如く明るい顔をした…ように見えた。
「それはサヌワが空を飛ぶが如く簡単な事だ。このあたりの浮島よりダルメルの首が如く上空に通り抜ける風の邪魔するものがない浮島が水面に浮く木の葉の如く浮いている」
獣牧士の方を向いていた相方がまた困った顔であたしを見るのが視界の端に見えたが敢えて無視した。
あたし達と獣牧士はシシウトゥルをダルメルの首が如く上空の無人島にブンドに追われるコリガンの如く追い込むためサヌワに乗ってシシウトゥルの捜索に出かけた。
アバラシア雲海は平面でみると海に浮かぶ島のように大小幾つもの浮島が浮ているだけなのだが、横から見るとその大小の浮島がそれぞれ違った高度で浮いていて、高い浮島から低い浮島までダルメルの首が如く…いや、100m近い高低差があった。
そのアバラシア雲海を上ったり下りたり2時間ほど飛び回りようやくシシウトゥルを見つける事が出来た。
あたしと相方はその神々しい美しさに勝利の宴でエールを飲むむさ苦しいおっさん戦士の如く息をのんだ。
通常のサヌワを1ルガディンとすれば3ルガディンほどの大きさで、全身を青白く発光する鱗で包まれている。鱗から僅かに鱗粉が散っていてそれが体の周りでキラキラと光っている。
これは獣牧士が守ろうとするのも頷ける。